研究概要 |
【目的】 Vitamin K(VK)は白血病細胞や肝癌細胞などに対し、増殖抑制、アポトーシス誘導作用を有している。今回、VK2の肝癌細胞増殖抑制機序について基礎的検討をおこなった。 【方法】 肝癌細胞株(HepG2、Hep3B、Huh7)にVK2を添加し、1)細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導作用、2)細胞周期解析、3)Cyclin dependent kinase(CDK)inhibitor(p16,p21,p27)発現、4)Cyclin D1発現、5)Cyclin D1 promoter活性、6)転写因子(AP-1,NF-κB)のcyclin D1 promoterへの結合活性、7)抗癌剤(CDDP,5-FU,VP-16,Docetaxel)との併用の効果、8)細胞外マトリックス分解酵素MMP-1,MMP-3,MMP-7の発現、である。 【結果】 1)増殖を抑制するが、アポトーシス誘導作用は弱い、2)細胞周期をG1期に停止させる、3)CDK inhibitorsの発現を増強する、4)Cyclin D1発現を低下させる、5)Cyclin D1のpromoter活性を抑制する、6)Cyclin D1 promoterへのAP-1,NF-κBの結合を抑制する、7)CDDPの細胞増殖抑制には拮抗するが、5-FU,VP-16,Docetaxelの細胞増殖抑制作用は増強する、8)MMP-1,MMP-3,MMP-7の発現を抑制する、ことが示された。 【結論と今後の展望】 VK2はCDK inhibitorの発現を増加させるとともに、NF-κBのcyclin D1 promoterへの結合を阻害することにより、cyclin D1の発現を低下させG1期に停止させる。また5-FUなどの抗癌剤との併用や、癌の浸潤抑制などへの新たな臨床応用への可能性が示された。
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