研究概要 |
消化器癌では癌抑制遺伝子p53の変異が高頻度に認められ,その多くはp53のDNA結合ドメインに発生する.今回申請者らは,大腸癌由来細胞株でp53蛋白のコドン248に変異を有するSW480とp53野生株であるHCT116をp53-DNA結合ドメイン修飾剤であるCP31398で処理し,その抗腫瘍化の基礎的検討を行った.その結果,いずれの細胞株に対しても1) CP31398は濃度依存性にアポトーシス誘導効果を示した.2) CP31398はいずれの細胞株におけるp53の安定化を誘導し,アポトーシス関連分子の誘導を惹起することを確認した.さらに,CP31398による殺細胞効果を増強する目的で,当教室で作製した改変型p53とCP31398の相乗効果の有無を検討した.改変型p53を発現するベクターを作製し,これを肺がん細胞株H1299細胞に遺伝子導入しCP31398を添加したところ,この細胞のアポトーシス誘導が確認された.この効果は,CP31398存在下で増強した.CP31398は変異型p53を発現する細胞のみならず,欠損株においてはp53を用いた遺伝子治療との併用で効果増強を図ることが可能であると考えられた.今後,この抗腫瘍効果の増強をin vivoで確認する予定である.
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