研究概要 |
2000年11月に,わが国でもラミブジンがHBVの治療薬として認可され,従来インターフェロンのみであった抗ウイルス治療に新たな選択肢ができた.ラミブジンは,経口投与で副作用も少ないコンプライアンスの良い薬であるが,投与中止後の再燃が高頻度であることと長期投与により耐性ウイルスが出現することが問題とされた.そこで,われわれは耐性ウイルスを高感度に検出する新たな方法を開発し,耐性ウイルスの出現時期やその動態を検討した.この結果,1.耐性ウイルスがラミブジン投与前から存在する例のあること,2.ラミブジン投与開始後6か月以内の早期に耐性ウイルスが出現しうること,3.一度出現した耐性ウイルスがラミブジン投与中にも自然消失する例のあること,4.耐性ウイルスの高感度な定量により,そのbreakthroughを予測しうること,を明らかにした.さらに,その対策としてラミブジンを先行投与後インターフェロン単独治療に移行することにより,ラミブジン投与期間を短くしながら,かつ,治療期間を長くすることができ,治療成績の向上につながることを報告した. また,HBVの肝発癌機序として宿主遺伝子への組み込みに注目し,我々が開発したAlu配列を利用したPCR法を用いて,癌が発生する前の慢性肝炎組織における組み込みを解析し,1.急性肝炎,劇症肝炎後においてもHBV組み込みの見られること,2.慢性肝炎においてもHBV組み込み細胞のクローナルな増殖があること,3.慢性肝炎組織におけるHBV組み込み部位の近傍にはAxin1などの癌遺伝子や肝癌の癌部と非癌部での発現レベルに差の見られる新規の癌関連遺伝子候補が存在すること,を明らかにし,HBV組み込みによる宿主遺伝子の修飾が多段階発癌の1ステップとして重要であること,HBV組み込みをタグとした宿主遺伝子の同定が癌関連遺伝子のスクリーニング法として有用であることを示した.
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