研究課題
基盤研究(C)
肝臓内Tリンパ球の活性化は自己免疫性肝炎を含む肝傷害において重要な役割を演ずる。本研究では、リンパ球のホーミング改変薬剤の肝臓内リンパ球への影響を探り、次いでConcanavaline A(ConA)肝炎における実験的肝傷害に対するリンパ球ホーミング改変薬剤の効果を検討した。これまでリンパ球ホーミング改変薬剤としてFTY720が使用されてきたが、新たに開発されたKRP-203の効果についても検討を行なった。マウスBALB/Cの肝臓からの灌流リンパ球を回収し、FTY720およびKRP-203の投与の有無による各成分の変化及び絶対数をFACSにより解析した。新規KRP-203はFTY720と同程度に肝臓内と末梢血のリンパ球減少を誘導した。また、ConA投与により惹起されるマウス肝炎モデルでは、同量投与(1mg/kg)にもかかわらず、KRP-203はFTY720よりも優れた炎症抑制効果(24時間後のALT上昇の抑制)を示した(p<0.05)。KRP-203による肝炎軽減につき、用量依存的な試験を行なった結果、0.1mg/kg程度の投与で十分なALT上昇を抑制することができた(p=0.0289 vs. control)。さらにFACS解析では、ConAによる肝炎の成因の一つとなるCD4陽性細胞は、リンパ球ホーミング改変薬剤によりほぼ半減し、CD4陽性細胞の減少と肝傷害の軽減が平行関係することが判明した。さらに定量的RT-PCR法により標的細胞のSIP1受容体の発現を解析した結果、KRP-203投与における標的リンパ球のS1P1受容体の発現量に差がないものの、肝臓への恒常的なリンパ球ホーミングに重要なケモカイン受容体CXCR4の発現が高いことが示された。実際、抗CXCR4抗体によるFACS解析では、KRP-203に暴露された肝CD4陽性リンパ球分布に変化を受けないことが明らかとなった。先に観察されたCXCR4の高発現はKRP-203によってホーミング修飾を受けないCXCR4+CD4+リンパ球の相対的な濃縮によって引き起こされていたことを示唆するものであり、KRP-203の標的となる細胞集団は末梢血中のCXCR4+CD4+リンパ球であることが示唆された。したがって、リンパ球ホーミング改変薬は自己免疫性肝炎などのT細胞を介して惹起される肝傷害を軽減する付加的な有効薬剤となりうる。
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