研究概要 |
今年1年で、erbB3リガンドheregulinがCOX-2発現によって調節をうけるとする私達の仮説について、かなりの部分を実証した。以下に実験結果を示す。(1)胃線維芽細胞をIL-βで刺激すると、COX-2発現とともに、培養液中にerbB3刺激活性を有するheregulin蛋白が増加した。(2)heregulin蛋白発現、erbB3リン酸化刺激活性は、選択的COX-2阻害剤の添加により抑制され、更にPGE2の添加によって回復することから、COX-2/PGE系路に依存する可能性が示された。(3)cAMP誘導体とforskolinは、ともにheregulin発現とその放出を刺激することから、heregulin蛋白発現とその培養液中への放出はcAMP依存性蛋白キナーゼAに依存する可能性がある。(4)heregulin mRNA発現をreal-timePCRで定量化すると、IL-1βは胃線維芽細胞heregulinα、heregulinβmRNA発現を刺激し、この刺激作用は選択的COX-2阻害剤で抑制され、PGE2添加にて回復することから、COX-2/PGE2系路はheregulinの転写活性を刺激すると考えられた。(5)外因性に投与したheregulinは大腸癌細胞株erbB2,erbB3を燐酸化し、VEGFの放出を刺激した。(6)heregulinはCaco2大腸癌細胞のPI3キナーゼ、Akt,ERK1/2,p38MAPキナーゼを活性化し、heregulin刺激によるVEGF分泌はp38MAPキナーゼ阻害剤、NFkappaB阻害剤により抑制された。(7)real-timePCRで検討するとヒト大腸癌組織において、heregulin発現とVEGF発現が相関した。
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