研究概要 |
【目的】全身性熱ストレス(HT)による心臓HSP72の発現には,phosphatidylinositol 3-kinase (PI3K)依存性Akt活性化が必須であり,ストレプトゾトシン誘発糖尿病(STZ-DM)ラットでは,この経路が障害されているとの仮説を検証した。【方法】STZ-DMラットをインスリン治療群(STZ-INS群),非治療群(STZ-VEH群)に分けた。3週後に全身性HTを与え,1および24時間後に心臓を摘出した。【結果】1.対照群に比しSTZ-DMラットではHTによるPI3K依存性Akt活性化およびHSP72発現が低下していた。これらはインスリン補充により回復した。2.摘出心を用いた虚血再灌流実験で,HTによる再灌流時左心機能回復の改善効果はSTZ-DM心で低下しており,インスリン補充により回復した。3.ラット仔心筋培養細胞において,HTによるHSP72発現は,インスリンの添加で増強し低酸素再酸素化障害の減弱をもたらした。4.これらの効果は,wortmanninおよびLY294002の前処置で解消された。【結語】HTによるHSP72発現にはPI3K依存性Akt活性化が必須であり,STZ-DMラットでは,おそらくインスリン欠乏のため,この経路が障害されているものと考えられた。本研究の成果はDiabetes誌に掲載された。これに引き続き,遺伝性インスリン抵抗性/2型DMモデルであるOLETFラットを用い,1)OLETFラットではHSP72発現が減弱していること,2)この機序としてPI3K依存性Akt活性化の低下が考えられること,3)インスリン抵抗性改善案のpioglitazone投与がこれを改善することを明らかにし報告した(Diabetes, in press)。
|