研究課題
基盤研究(C)
平成16年度〜平成17年度にかけて、心房細動中の興奮伝播過程を詳細に解析し、source-sink理論が心房細動の維持(慢性化)における機序の解釈に応用できるかを評価した。以下に、本研究の実績の概要を示す。(1)スーパーコンピュータを用いたシミュレーション解析Luo-Rudy(Phase2)モデルを用いて、複雑な左房の心筋構造を想定して壁の厚い領域と薄い領域が混在したモデルを作成し、持続性心房細動中の興奮波をスーパーコンピュータで解析したところ、興奮伝播のミアンダリング現象と分裂現象が観察され、細動中には新しい興奮波の発生が観察された。これらの現象は、spiral wave説の概念に矛盾するものではなく、source(興奮波のエネルギーの大きさ)とsink(興奮波が伝播することが可能な領域)のバランスによって成り立つとするsource-sink理論を裏付けるデータといえる。このシミュレーション解析から得られた知見を基に実験を進めた。(2)動物心筋を用いた電位マッピング解析イヌ冠動脈灌流および表面灌流の実験モデルを作成し、特殊電極プラーク(サイズ4.6×5.4cm、電極数224)を用いて、アセチルコリン灌流下で誘発した持続性心房細動中の興奮伝播の観察を高性能のマッピングシステムを用いて、dV/dt法で行った。その結果、コンピュータシミュレーション解析で得られたデータとほぼ同一の現象が観察された。Source-sink理論を用いて持続性心房細動の機序を説明することは可能と考えられた。心房細動中の興奮伝播が成り立つためには、sourceとsinkのバランスが重要であり、このバランスがsource>sinkとなれば心房細動は持続し、逆にsource<sinkとなれば心房細動は停止した。Source-sink理論は、心房細動の発生のみならず、維持(慢性化)の機序の解釈にも応用できると考えられた。
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