研究課題
基盤研究(C)
Ghrelin(グレリン)は分担研究者の寒川らが発見した新規の成長ホルモン(GH)分泌促進ペプチドであり、脳下垂体からのGH分泌促進作用のほかに、摂食調節、糖および脂質代謝、骨代謝などに対する多 彩な作用を有する。また、ヒト及び動物に投与したGhrelinは顕著な交感神経抑制作用をもつ。最近、培養心筋細胞でのGhrelinによる細胞死抑制効果が報告されており、心疾患の新しい治療法としての可能性が注目されている。しかしながら、生体における意義に関しては、その研究が緒についたばかりであり、心臓リモデリングや心不全においても病態生理的意義を含め不明のままである。よって本研究では、種々の心疾患におけるGhrelinの病態生理的意義を検討し、Ghrelinを応用した心臓病治療の基盤確立につなげる目的で、心筋梗塞モデルにおけるGhrelinとその受容体の情報伝達系の(1)発現・分泌調節と(2)投与効果を検討した。この結果、心筋梗塞後の心臓からの内因性ghrelin分泌が完遂すること、投与したCNPが心筋梗塞後残存心筋のリモデリングを改善し心機能を高めて心不全を抑制すること、が明らかとなった。また、投与したGhrelinは心筋梗塞後に増加した心臓交感神経活性を有意に抑制した。さらに、そめ機序を明らかにするため、Ghrelin受容体の心臓における発現を検討し、この蛋白が心臓に分布する神経終末に局在することを明らかにした。また、副交感神経の細胞体であるNodose神経節にも受容体mRNAを証明した。これらの事実はGhrelinが心臓の副交感神経求心繊維の神経終末に作用して中枢を介した交感神経抑制に働く機序を示唆しており、生物学的にも臨床的にも新しい作用メカニズムと考えられる。本研究費によりそれまで明らかではなかったGhrelinの心筋梗塞における病態生理的及び治療的意義とその機序を世界で初めて解明できた。今後これらの系を用いてGhrelinとその受容体の循環器疾患における意義をさらに追求して行きたい。
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