研究概要 |
慢性閉塞性肺疾患の初期症状は労作時の息切れであるが、病状の進行とともに安静時にも息切れを感じるようになる。かかる息切れは脳によって認識されが、その際の脳の局所機能については全く知られていない。本研究は^<18>FDGを用いたポジトロン断層撮影(PET)による機能的脳画像解析法により脳組織におけるグルコース代謝の局所変化を検出して、以下の如く息切れ時の脳内代謝賦活部位及び抑制部位を明らかにした。 1)健常者においては吸気抵抗の大きさに依存して、呼吸努力感の強い呼吸困難が大きくなった。ざらに脳内代謝賦活部位と抑制部位が認められ、脳内代謝賦活部位としてprecentral gyrus, postcentral gyrus, orbital gyrusが相当し、抑制部位としてprecuneus, middle frontal gyrus, suerior parietal lobe, cingulated gyrusなどが相当した。 2)重症肺気腫においても健常者に吸気抵抗を負荷した時と同様に脳内代謝賦活部位と抑制部位が認められた。脳内代謝賦活部位としてlingual gyrus, superior temporal gyrus, orbital gyrusが、抑制部位としてはprecuneus, cingulate gyrus, temporal lobe, superior parietal lobeなどが相当した。 3)健常者における抵抗負荷時と肺気腫患者での脳機能を比較すると、賦活部位ではorbital gyrus、抑制部位ではprecuneus, cingulate gyrus, superior parietal lobeでは一致をみた。他の脳の部位では一致をみなかった。脳代謝において賦活する部位と抑制される部位が認められるという定性的な特徴は健常者での吸気抵抗負荷時でも重症肺気腫患者でも同様であった。 今後の課題:今回得られた成績は、呼吸筋への負荷による脳活動変化と呼吸困難そのものによる脳活動の変化が包括された変化と見られる。この点、呼吸困難のみの脳活動の変化を捉えるためには呼吸筋への負荷のない状態で呼吸困難のみを引き起こすことが出来るモデルの開発が必要である。
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