研究概要 |
特発性間質性肺炎は原因不明の間質性肺炎(IP)であり、臨床病理学的に進行性で予後不良な通常型間質性肺炎(UIP)、予後良好な非特異性間質性肺炎(NS工P)と特発性器質化肺炎(COP)などが含まれる。また、類似病変としてびまん性肺胞傷害(DAD)がある。線維芽細胞増殖因子(FGF)-10は、主に間質細胞で産生され上皮細胞の増殖分化に重要な因子であることが知られている。UIP,NSIP,COP,DADにおけるFGF10,FGF7とそのレセプターFGF-Rについて検討した。免疫組織化学的に、FGF10,FGFRのUIP,NSIP,COP,DADにおける分布と染色性を検討した。またFGF10,FGF7,FGFR,について、controlと対比して組織切片全体と早期線維化病変についてRealtime PCRにより検討した。免疫組織化学では、FGF10はUIP,NSIP,COP,DADで、マクロファージの他に早期線維化巣の線維芽細胞に陽性であった。早期線維化巣を覆う再生上皮細胞は、UIPでは扁平化生上皮が多くみられ、NSIP,COP,DADではII型肺胞上皮であり、FGFRは両者の再生上皮に染色性にほぼ差がなく陽性であった。Realtime PCRでは、切片全体での検討では、FGF10は、コントロールに比し間質性肺炎で高い傾向であり、FGF-7では差はほとんど確認できなかった。Micro dissectionによるFGF-10およびそのレセプターFGFRの検討では、COPに比べ、UIPでレセプターの発現に比較してFGF-10の発現が低い傾向であった。これらの結果より、間質性肺炎,DADの早期線維化巣の修復機序にFGF-10/FGF-Rが関与していること、UIPにおける肺胞上皮細胞の再生不良に、増殖因子FGF10・FGFRの関与が示唆された。
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