研究概要 |
ah1食塩感受性高血圧ラットに、アデノウィルスベクターを用いてklotho遺伝子を導入することにより内皮機能低下と腎障害の進行を抑制できるか検討した。 高食塩食の収縮期血圧は261±11mmHgに上昇しており(低食塩食144±7mmHg),アセチルコリンによる血管弛緩反応は,低食塩食群98±2%に比べ,43±6%に減弱していた。腎臓におけるklotho mRNAの発現も有意に減少していた。klotho導入群の収縮期血圧は233±6mmHgであり,アセチルコリンによる血管弛緩反応は,61±9%に改善していた。尿中アルブミンは,無処置のラット(656±220mg/日)に比べ96±24mg/日に減少していた。また,腎臓の組織所見では,klotho導入群において,糸球体の腫大と血管周囲の線維化の抑制が認められた。 Elongation factor-1プロモーターを用いて、klotho遺伝子を大量発現するトランスジェニックラット(tg)に解析では、尿中の一酸化窒素代謝物はtgにおいて21.5±4.2mmo1/dayであり、野(11.2±2.0mmol/day)比べ有意に高値であった(n=10,p<0.05)。酸化ストレスの指標であるisoprostane(8-iso prostaglandin F2 alpha)は、tg(102±4pg/mlCr)で、野生型(145±6Cr)より有意に低値であった(n=9,P<0.01).さらに、大動脈における内皮依存性血管弛緩は、意によかった(54±5%vs.41±3%,n=11,p<0.05)。 ラット大動脈平滑筋細胞(RASMC)にFGF-2を添加すると、オステオポンチン(OPN)、オステオカルシン(OCN)のmRNAが増加し、逆にSMα-actinのmRNAが減少した。また、ルシフェラーゼアッセイでFGF-2はOPN、OCNプロモーターの活性を増加した。また、FGF-2はRASMCにおいて活性酸素種を産生させた。NAC、AEBSFなどの抗酸化剤によりFGF-2によるERKI/2の活性化と、OPN遺伝子の誘導が抑制されることから、FGF-2による血管平滑筋細胞の骨芽細胞分化には活性酸素種の産生が重要と考えられた。
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