研究概要 |
蛋白尿の機序を検討するため糖尿病性腎症初期の微量アルブミン尿とNADPH oxidaseによる酸化ストレスの関係を調べた。apocyninはNADPH oxidaseのcytosolic componentの細胞膜componentへのmembrane translocationを抑制、superoxide産生を抑制し、糸球体での蛋白濾過を抑制する(Kidney Int 67(5),2005)。NADPH oxidaseの直接的な抑制は蛋白尿の減少に有効な治療法である(Curr Hypertens Rev 1(1),2005)。p38MAPKの阻害薬はIL-1,TNF-αの産生抑制を介してNADPH oxidaseを抑制し、尿蛋白抑制に作用する(J Hypertens23(1),2005)。 糖尿病に高脂血症を併発したラットでは酸化ストレスの腎での産生が相乗的に増加し、糸球体内マクロファージ浸潤が増加する(Kidney Int 65(3),2004)。糸球体内マクロファージは酸化ストレスやcollagenase産生などを介して糸球体基底膜のシャントや断列をきたし、高分子蛋白のリークの原因となる。しかし、ヒト腎生検組織の検討で糸球体基底膜のシャントや基底膜断裂の糸球体切片当たりの数は蛋白尿や血尿の程度あるいは糸球体硬化や間質尿細管病変と相関がみられなかった。 PAM染色で基底膜断裂は蛋白分子の選択性の良い微小変化型ネフローゼ症候群のモデルのPAN腎症に比べ蛋白選択性の悪いnephrotoxic nephritisモデルに多くみられた。 糸球体GBM断裂は浸潤白血球部位にみられ、CsCl_3で検出したsuperoxide産生は糸球体上皮細胞の基底膜との接触部で増大していることを電顕レベルで確かめた。 糸球体,特にpodocyteに発現するNADPH oxidaseは酸化ストレスにより糸球体基底膜を障害しシャントや断列を形成し高分子蛋白尿の機序として重要である。糸球体podocyteのNADPH oxidaseの制御は蛋白尿抑制の新しい治療戦略として重要である。
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