研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、尿検体を用いた新しい非侵襲的腎疾患診断法を確立することである。研究成果は、1)腎病態の5型分類:尿検体を有形細胞分析、高感度検出システムを用いた尿蛋白泳動分画解析から腎疾患病態を5型に分類、尿所見から腎病態を理解することができた。A(尿細管性尿蛋白、エフェクター型細胞)尿細管間質性腎炎、B(糸球体性尿蛋白)微小変化型、膜性腎症、C(糸球体性尿蛋白、エフェクター型細胞、変形赤血球)IgA腎症、ANCA関連腎炎、D(混合性尿蛋白、エフェクター型細胞、変形赤血球)間質障害を伴うANCA関連腎炎、E(血漿型尿蛋白、非エフェクター型細胞、非変形赤血球)特発性腎出血、である。この一部は特許出願した。2)尿蛋白のプロテオミクス分析:尿蛋白分画電気泳動において、疾患特異的なパターンをα1分画に確認し、尿中の蛋白分解酵素濃度との関連性を検討した。検出された分画をMALDI-TOF型質量分析装置を用いて解析、蛋白成分の同定を行った。同定された蛋白の疾患特異性を検討している。3)DNA chipを用いた腎炎モデルの発現遺伝子プロファイリングと腎炎特異的発現遺伝子の同定および尿検査への応用:プロファイリングの結果から、特異的遺伝子を3つ同定した。発現部位をin situ hybridizationと免疫組織化学により確認し、バイオマーカーとしての応用性について検討した。その1つは、病態形成に関わる炎症因子(MMP-12)であることを突き止め、MMP-12を腎炎特異的な指標として、診療への応用の可能性を検討、4)に記すように治療法の開発に繋げた。4)MMP-12の腎炎活動性指標としての応用:ペルオキシゾーム増殖活性化受容体(PPARI)・αのリガンド(フィブレート)にMMP-12の発現を制御する機能を見出し、新たな腎炎治療薬としての応用の可能性を示した。以上のように、非侵襲的腎疾患診断法の:確立、バイオマーカーの発見、これを治療法スクリーニングの手段として応用することなど、幅広い研究成果を得ることができた。
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