研究課題
基盤研究(C)
近位尿細管から尿中に排泄されるL-FABPのELISAによる測定法を開発した。そこで、透析導入原因疾患の第一位である糖尿病性腎症をターゲットにL-FABPの動態と尿中L-FABPの臨床的意義を検討した。1.糖尿病性腎症におけるL-FABPの動態(基礎的研究)ヒトL-FABP染色体遺伝子導入(Tg)マウスを使用し、ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病モデルを作成した。STZ糖尿病のTgマウスでは、間質尿細管障害が認められ、近位尿細管におけるL-FABPの遺伝子発現は、コントロールに比べ有意に増加した。STZ糖尿病のTgマウスでは、尿中へのL-FABP排泄量が増加した。・糖尿病では、近位尿細管におけるL-FABPの遺伝子発現は亢進し、尿中への排泄が増加する事が示された。2.糖尿病性腎症における尿中L-FABPの臨床的意義(臨床的研究)(1)外来通院中の糖尿病患者(n=147)を対象に尿中L-FABPを測定した結果、尿中L-FABPは、腎症の進行とともに上昇した。尿中L-FABPは、微量アルブミンが検出されない腎症1期において、正常者(n=70)より有意に高値であった。・尿中L-FABPは、糖尿病性腎症の早期診断に有用なバイオマーカーになりうると考えられた。(2)腎生検で糖尿病性腎症と診断された患者(DN, n=8)、コントロールとして微小変化型の患者(MCNS, n=12)を対象にした検討では、尿中脂肪酸、尿中L-FABPの排泄量は、MCNSに比べ、DNで有意に高値であった。間質尿細管障害の程度は、MCNSにくらべ、DNで有意に強く認められた。・DNでは、脂肪酸が近位尿細管に過剰に負荷され、間質尿細管障害が進行している可能性がある。このような状況では、近位尿細管におけるL-FABPの発現が亢進し、尿中へのL-FABP排泄が増加すると推測される。尿中L-FABPは、近位尿細管に負荷された脂肪酸ストレスの程度を反映する指標であると考えられる。
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