研究概要 |
相模原パーキンソニズムは常染色体性優性遺伝形式をとり,5世代にわたり発症が確認されている家族性パーキンソニズムで,薬物反応性を含め,通常の孤発性パーキンソン病とほぼ同様の臨床像を示す.われわれは世界に先駆けて相模原家系の遺伝子座を決定し,遺伝子座をPARK8として登録した.しかし,2004年に米国で,PARK8パーキンソニズムの病因遺伝子が,LRRK2であることが報告された.惜しくも病因遺伝子決定に関しては米国に遅れをとったが,本家系もLRRK2遺伝子の12020T変異であることを決定し,報告した.その後,PARK8パーキンソニズムは,遺伝性パーキンソニズムの中で,最も頻度が高いことが明らかとされた.遺伝子変異部位も数ヶ所報告されており,変異部位により若干臨床像や神経病理像が異なることも報告されてきている.さらに,海外で多い遺伝子変異部位はG2019S変異であり,G2019S変異PARK8パーキンソニズムは臨床像,病理像は相模原家系と異なることも明らかとなった.すなわち,G2019S家系はLewy小体が多発することが多いが,12020T家系は基本的にはLewy小体陰性などである.G2019S,12020Tは共にアミノ酸配列からLRRK2のカイネースの活性化部位における遺伝子変異と推定されるが,一塩基の差によってLewy小体の形成過程が異なることは興味深く,この差異による機能発現の乖離の有無について検討を開始している.LRRK2はアミノ酸配列からカイネース以外にも多機能を有したタンパク質であることが推定されている.現在LRRK2の機能解析や,基質の同定,存在様式にっいて検討を進め,パーキンソン病の病因解明のブレークスルーとなる事を目的としている.
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