研究概要 |
2型糖尿病の病因にはカロリー及び脂質の摂取過多、肥満及び運動不足等の生活習慣因子の他に遺伝因子も関与している。遺伝形式の研究から病因遺伝因子は多岐にわたる(多因子遺伝)ことが分かっているが、私達は、この多岐にわたる遺伝因子の幾つかを見つけることを目的として、多数の候補遺伝子を対象に関連解析を行った。【方法】2型糖尿病症例(DM)148名及び正常耐糖能症例(NGT)227名を用いた。解析は、704遺伝子2039単塩基多型(SNP)を対象とした。【結果】29遺伝子の33SNPが単SNP解析で有意となった。その内の、ABCA1、及び、Nephrin遺伝子に関して、更に、解析した。a.ABCA1:5‘上流から最終エクソンまでの遺伝子全長にわたり34個のSNPを抽出して解析し、さらにハプロタイプ及びデイプロタイプ解析も行った。13個の連鎖不平衡ブロック(LD block)が認められた、その内の5'端にあるLD blockで有意なハプロタイプの分布の違いが認められた(NGT vs. IGT+DM:overall p=0.0180;NGT vs.DM:0.0001).さらには、フィシャー解析(NGT vs.DM)にて本LD blockのハプロタイプ2が有意に糖尿病のリスクになっていることが示された(OR:2.53, 95%CI:1.62-4.12. p=0.0001)。また、デイプロタイプ解析でもハプロタイプ2を含む遺伝子型が有意に糖尿病のリスクになっていることが示された(OR:2.59, 95%CI:1.48-4.54. p=0.0013)。b.Nephrin:解析した全てのSNPが有意となった(C294T, -61C/G, C2289T;p値は各々、0.0023, 0.0336及び0.0007)。ハプロタイプ解析でも各々のSNPの非リスクアレルから構成されるハプロタイプ1がOR:0.42, P=0.0008、そのホモの組み合わせであるデイプロタイプ1/1がOR:0.35,p=0.0005と有意であった。症例255名、対照471名と増やし、更に、症例と対照の間で異なる臨床データ(収縮期血圧、血清中性脂肪、及びBMI)で補正しての検討でも、SNP, C2289Tの非リスク遺伝子型はOR:0.38,p<0.0001と有意にDMと関連していた。また、リスク及び非リスク遺伝子型間では空腹時血清インスリン値に有意な差がみられた(3.9±2.4vs.4.6±3.0μU/ml,p=O.035)。【結語】ABCA1、及び、Nephrin遺伝子はDMは糖尿病病態に何らかの役割を持っていると思われた。
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