研究課題
基盤研究(C)
本研究では、可溶型LOX-1の切断を促進する病態生理学的な刺激と、その切断に関わるプロテアーゼの同定を含めた切断の分子機構につき検討した。HEK-293T細胞にヒトLOX-lcDNAを導入した培養細胞モデルを実験に用いた。炎症性サイトカインについて検討したところ、急性冠症候群にてその血中濃度が上昇し、またヒト粥状動脈硬化プラークにて、その受容体とともに強い発現がみられると報告されでいるインターロイキン18(IL-18)が、濃度および時間依存的に可溶型LOX-1の切断を増強することが、ヒトLOX-1遺伝子を導入したHEK-293T細胞で示された。また、種々の膜蛋白の膜表面からの切断に関与することが知られるADAM10遺伝子導入したところ、それ単独で可溶型LOX-1の切断を促進した。また、ADAM10に対する3種類のsiRNAを作成し導入したところ、そのうち2種類のADAM10 siRNAでADAM10の発現が有意に抑制されるとともに、IL-18で誘導される可溶型LOX-1の切断が有意に抑制された。一方、陰性対照のsiRNAの導入ではIL-18による可溶型LOX-1の切断は抑制されなかった。IL-18による可溶型LOX-1の切断は、TNF-alphaの刺激にて予めLOX-1の発現が誘導された培養血管内皮細胞でも同様に濃度依存的に促進されることが観察された。以上より、IL-18が急性冠症候群などの病態において粥状動脈硬化プラークから可溶型LOX-1を切断し放出する刺激の一つである可能性が示唆された。
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