研究課題
基盤研究(C)
糖尿病合併症発症、進展阻止は患者QOLのためにも、また医療経済上も重要である。申請者らはこれまでに糖尿病合併症発症におけるミトコンドリア由来活性酸素(mtROS)過剰産生の意義を提唱している(Nature,404:787-790,2000)。近年、メトホルミンが血糖改善効果とは独立した糖尿病合併症抑制効果を持つことが報告されたが、機序の詳細は不明である。今回の研究では、糖尿病合併症の新規治療法を確立するために必要な細胞内標的分子の同定を目的として、ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いて、メトホルミンによるミトコンドリア由来活性酸素抑制作用、ならびにその機序の解明、さらにはメトホルミンによるミトコンドリアバイオジェネシス亢進作用を検討し、以下の1〜4の結果を得た。1.高グルコース培養により細胞内ROS、mtROSの著明な増加が認められたが、メトホルミンおよびAMPK活性化薬であるAICARはいずれも濃度依存的に抑制した。2.メトホルミンおよびAICAR投与でAMPKリン酸化の増加、PGC-1αmRNAの増加を認めた。また、PGC-1α過剰発現細胞ではmtROS抑制が認められたが、ドミナントネガティブ作用を持つAMPKα1(T172A)過剰発現細胞ではこれら薬剤の投与にもかかわらずmtROS抑制が認められなかった。3.メトホルミンおよびAICAR投与でMnSOD mRNAの増加が認められたが、AMPKα1(T172A)過剰発現細胞ではこれら薬剤の投与にもかかわらずMnSOD mRNAの増加が認められなかった。4.メトホルミンおよびAICAR投与またはPGC-1α過剰発現細胞ではNRF-1、mtTFA mRNA、mtDNA、ミトコンドリア数の増加を認めた。以上より、メトホルミンはAMPK-PGC-1α経路の活性化によりmtROS除去酵素であるMnSODの発現増加を引き起こし、高グルコースによるmtROS産生増加を抑制していること、またAMPK-PGC-1α経路の活性化はミトコンドリアバイオジェネシス促進作用も併せ持つことを明らかにした。AMPK、PGC-1αは糖尿病合併症治療薬の開発のための標的分子である可能性が示唆される。
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