研究課題
基盤研究(C)
同種造血幹細胞移植は造血器腫瘍や骨髄機能不全などの難治性疾患において治癒をもたらす治療法として確立してきた。しかし、少子化に伴い、HLA一致同胞ドナーが得られる頻度は少なく、骨髄バンクや臍帯血バンクでドナーが得られない患者も少なくない。この問題の解決策としてHLA不一致の血縁者をドナーとする移植法が検討されている。母児間免疫寛容仮説による母児間移植もそのひとつである。われわれは、この仮説に基づき母児間マイクロキメリズムを免疫寛容の指標として母児間移植を行ってきた。多くは重篤な移植片対宿主病(GVHD)を発症することなく移植が実施可能であるが、一部とくに母から児への移植において重篤なGVHDがみられることが明らかになってきた。母児間では、母は児の遺伝父HLA抗原(inherited paternal HLA antigen : IPA)に、児は母の非遺伝母HLA抗原(non-inherited maternal HLA antigen : NIMA)に寛容を獲得すると考えられる。この寛容獲得の程度を検出する方法を確立すれば、移植後のGVHDの予測も可能になると考えられる。本研究では免疫寛容の程度をドナーT細胞の患者抗原提示細胞(B細胞)に対する反応性をELISPOTアッセイを用いてIFN-γの産生量を定量化することで検出することを試みた。その結果、非活性化B細胞をstimulatorとし、CD3陽性細胞をresponderとして反応させ、ELISPOT readerで解析することにより検出可能なシステムを開発できた。CD3陽性細胞は、自己B細胞に対する反応はもっとも低く、第三者アロB細胞に対する反応はもっとも高かった。NIMAに対する反応は自己と第三者の中間の反応性示し、IPAに対する反応性は第三者アロB細胞に対する反応と同程度であった。今後、本システムを用いて実際の移植症例におけるGVHDとの関連を比較検討するprospective studyを行うことによって、本法の有用性を明確にできると考えられる。また、本法はHLA適合同胞間においてはマイナー抗原に対する反応性を検出するのにも有用と考えられ、今後実際の移植症例におけるGVHDとの関連を多数例で検討していく予定である。
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