研究概要 |
前年度の結果から,小児二次性MDS症例のt(2;8)(p23;p11)においては,MOZ-ASXH2キメラmRNAが白血病発生における病因的な役割を果たしていると考えられた.このキメラmRNAについて遺伝子構造を検討した結果,MOZの第14エクソンとASXH2の第2エクソンとがin-frameで融合していることが明らかになった.左記から予測されるキメラ蛋白では,MOZの断片にはPHDドメインやHAT (histone acetyl transferase)ドメインまでが含まれており,一方,転座相手方のASXH2はほとんどの領域が残されている.この構造上の特徴は,急性骨髄性白血病(AML)で同定されたMOZ-CBP, MOZ-p300キメラ蛋白とも類似しており,本症例における白血病発生の分子機構を考える上で重要な知見であると考えられた. 次に,本申請課題における解析対象の2症例以外にもASXH2遺伝子の関与する症例がないか検討した.まず,過去にGバンド解析された造血器腫瘍症例の中から,2p23バンドに相互転座の切断点を有するものを探索した.その結果,t(2;3)(p23;q26-q27)(症例1,症例2:AML),t(2;7)(p23;q22)(症例3:真性多血症),t(2;2)(p13;p23)(症例4:MDS)の計4例の2p23転座型腫瘍を見出した.そして,保存してあるカルノア固定染色体試料を用いて,ASXH2遺伝子を含むBACプローブ(RP11-63C2)によるFISH解析を行った.その結果,それぞれの2p23転座切断点は,症例1,症例2ではASXH2遺伝子の座位よりもセントロメア側に,症例3,症例4ではテロメア側に局在していた.以上から,上記の4例ともASXH2遺伝子は関与していなかった.
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