研究概要 |
我々は疾患特異的に作用する新規免疫制御戦略を確立するため,疫制御性遺伝子を発現する抗原特異的CD4+ T細胞を用いた細胞移入療法の可能性についてtype IIコラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルマウスを用いて検討している.その免疫制御性分子選択の基礎データを得るため,ウイルスベクターを用いて,T-bet,STAT1,STAT4,IL-12R-beta鎖,GATA-3等の相互作用について解析した.まず我々は,Stat4蛋白の量がTh1およびTh2細胞で大きな差があることを見出し,Th2分化のマスター遺伝子であるGATA-3がStat4の発現を抑制することを発見した.これは,Stat4発現レベルがTh1分化のベクトルの強さを制御することを示唆する点で重要な発見と考えている.次にT-bet欠損細胞を用いて実験を行い,T-betを欠損したTh細胞を厳密なTh1条件(IL-12と抗IL-4抗体存在下)で培養すると,ほぼ正常にTh1分化が起こるが抗IL-4抗体が存在しないと,またほとんどのTh細胞がTh2細胞に分化することを確認した.このことはT-betがIFN-γ産生に対する必須な因子ではないことを明確に示すと共に,T-betがIL-4あるいはそのシグナルを抑制する事がTh1細胞分化に重要である事を示している.最後にIFN-γ,IFN-γレセプター,Stat1各ノックアウトマウスを使った実験で,T-betの発現にIFN-γ-Stat1シグナルは必須ではない事も明らかにした.これらの結果はTCRから強い刺激が入りさえすれば,直接十分なT-betの発現が誘導されることを示しており,この場合にはStat4非依存的なTh1分化が起こり得る事を示した.
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