研究概要 |
遺伝性ニューロパチーの代表的疾患であるCharcot-Marie-Tooth (CMT)病には多数の病因遺伝子が明らかにされている.しかし,遺伝子変異が同定されない症例が多く,また遺伝子型と臨床型との関係も不明な点が多い.我々は遺伝子変異を簡便かつ感度良く検出するDenaturing High Performance Liquid Chromatographyを用いたスクリーニング法を確立し,多数の症例の解析を進めてきた. 髄鞘型CMT病でPMP22,Po,GJB1,EGR2に異常を認めなかった67症例を対象として,既知の病因遺伝子のLITAF,GDAP1,MTMR2,PRX,および候補遺伝子としてDRP2を検索した. PRXに関して,R1070Xのホモ接合体3例,R1070XとL132FsX153の複合ヘテロ接合体1例を検出した.PRX変異では,早期発症,緩徐進行性という臨床的特徴を明らかにした.DRP2変異は検出されなかった. 軸索型CMT病(軸索型,病型不明,distal hereditary motor neuropathy (dHMN)の計76症例)を対象として,既知の病因遺伝子のMFN2, HSP22&27, 候補遺伝子としてMFN1,DRP1を検索した.MFN2の7種の変異(R94Q,T236M,F223L,V244M,F284Y,K357N,E424G)を7例に,HSP27のP182SをdHMNの1例に確認した.MFN1, DRP1の変異は検出されなかった MFN1,MFN2、 DRP1はミトコンドリアの融合に重要な役割を果たしているが,MFN1,DRP1変異はCMT病の病因にはならないと考える. CMT病のほとんどの症例では,病因遺伝子が不明であり,さらなる検索が必要である.
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