研究概要 |
これまで、ヒト-マウスの移植系において臍帯血幹細胞の骨髄腔内輸注が経静脈移植より生着率の点で優れていると報告されてきた。 今回われわれは、ヒト造血幹細胞のソースとして、骨髄および臍帯血を用いた。CD34陽性細胞をビーズを用いて濃縮し、90%程度の純度のものを臍帯血で20,000〜100,000個、骨髄血で100,000〜1,000,000個を1匹のマウスに移植した。移植マウスは、5〜8週齢のNOD-SCID β2-nullマウス及びShi-SCIDマウスの2系統を用いた。マウスに300cGyの放射線照射後、尾静脈から移植したものを対照とし、脛骨腔内に移植したものとその生着率を比較した。移植6〜8週後マウス骨髄、脾臓、末梢血から細胞を抽出しヒト細胞の生着をCD45抗体を用いて計測した。同時にCD19抗体、CD11抗体、CD14抗体、CD3抗体、GlycophorinA抗体で染色し構成細胞分画を検討した。 臍帯血の移植では、経静脈的移植、骨髄腔内移植いずれも高率に生着が認められ、両者に差は見いだせなかった。 ヒト骨髄血の移植では、これまで高率に生着した報告はなかったが、細胞を前処理し、骨髄腔内輸注することでNOD-SCID β2-nullマウスに高率に生着せしめる方法が見いだせた。尾静脈から移植したマウスでは、生着しないか数%の生着しか確認できなかったが、骨髄腔内への移植では、最大80%の生着をみた。生着細胞は、T cellを除く系統の細胞が確認された。今後、移植前に行った細胞処理の方法について、さらに検討を加え、細胞のホーミングや生着に関与する分子についての解析が必要であると考えられた。
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