研究概要 |
ウイルス感染症が慢性腎炎の進展に関与していることが示されているが、未だ増悪機序の詳細は明らかでない。従来より、腎炎惹起性が注目されているコクサッキーウイルスB4(CoxB4)を用い、IgA腎症のモデル(HIGA)マウスに対する影響を観察した。 6週齢のHIGA雄マウス75匹(実験1)と45匹(実験2)を各々A,B,C群に分けた。A群には生CoxB4液を、B群には不活化CoxB4液を、C群はMediumを0.3mlずつ4週ごとに48週まで経静脈的に投与した。 実験1では各群間で10,20,30,40,50週齢時に採血と腎を摘出して、血清中のIgA濃度、IFN-γやCoxB4抗体価を測定し経時的な組織変化を検索した。実験2では6週齢のHIGA雄マウス45匹を15匹ずつA,B,C群に分け、6時間,1,7日に腎を摘出し、CoxB4に対する急性変化を検討した。実験3ではMediumやCoxB4と同時にカーボン粒子を投与しMes異物処理能を比較した。 実験1:A,B群ではCoxB4の有意な抗体上昇があり、Mes領域にCoxB4が局在した。A群ではB,C群と比較して早期から蛋白尿が出現しMes領域にIgAの優位な沈着があり、Mes細胞増殖や基質の増生がより高度に認められた。B,C群間には組織学的な有意差はなかった。血清IgA濃度は各群間で差はなく、血清IFN-γはA群で高値であった。実験2:A群ではCoxB4投与6-24時間後に他群と比較して有意な内皮細胞障害が生じた。実験3:A群では他群と比較してカーボン粒子の有意な処理能低下が認められた。 CoxB4反復投与により、HIGAマウスの腎病変がより早期に高度に出現した。この障害機序には、CoxB4の直接的な内皮細胞障害やMes異物処理能の低下およびIFN-γをはじめとするサイトカインなどの関与が示唆された。
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