研究概要 |
2004年度: 片側尿管結紮(UUO)ラットモデルで尿細管・間質の線維化を確認し,降圧剤(アンギオテンシン変換酵素阻害剤,ACEI)の投与量を変化させた単独投与群と対照群での線維化程度の差異を検討し,ACEIがHepatocytegrowthfactor(HGF)を誘導するか否かについて試験的検討を行った。さらに,HGF遺伝子導入を試み,ラット腎組織にヒトHGF発現が認められるかを検討した。ACEIを中〜高容量投与するとUUOによる尿細管萎縮、間質の線維化は有意に抑制されるが,HGFの誘導はACEI単独投与では有意ではなかった。 2005年度: 昨年度の結果、すなわち、片側尿管結紮(UUO)ラットモデルでの尿細管・間質の線維化が降圧剤(アンギオテンシン変換酵素阻害剤,ACEI)の投与量を変化させた単独投与群と対照群では、中〜高容量ACEI投与群では、低容量投与群と比較して尿細管萎縮、間質の線維化は有意に抑制された、との結果から同様の薬効を示すアンギオテンシン受容体拮抗剤(ARB)の効果を検討した。その結果、ARBを中〜高容量投与するとUUOによる尿細管萎縮、間質の線維化は有意に抑制されるが,HGFの誘導はARB単独投与では有意ではなかった。併用効果についても有意ではなかった。 2006年度: ヒトの近位尿細管に発現し、細胞内の脂肪酸代謝に関与する尿中肝臓型脂肪酸結合蛋白(以下U-FABP)の測定を小児慢性腎疾患で測定し、その臨床的有用性について検討した。とくに、進行性の腎疾患ではU-FABPが高値であること予想されるため、ネフローゼ症候群の中でステロイド反応性ネフローゼ症候群(SSNS)と巣状糸球体硬化症(FSGS)の鑑別が可能かどうかも検討した。その結果、U-FABPはネフローゼ症候群における巣状糸球体硬化症の鑑別に有用と考えられた。
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