研究概要 |
先に我々が行った川崎病罹患同胞検体を用いた連鎖解析において、複数の染色体上の候補領域が特定された。それらの領域中に位置する一塩基多型(SNP)を用いた体系的な患者・対照研究を行った結果極めて強い相関を示すSNPを見出すことに成功した(川崎病既往者検体637例対健常対照検体1034例;オッズ比1.89,95%信頼区間1.53-2.33,χ^2乗値35.8,p値2.2x10^<-9>)。米国人川崎病患児とその両親のトリオ検体による伝達不平衡試験によってもこのSNPの川崎病患児への有意に偏った伝達が観察され(209組;オッズ比2.13,95%信頼区間1.38-3.29,χ^2乗値12.3,p値0.00045)、異なる民族間における再現性ある相関であることが示された。さらに患者群を階層化した解析によりこのSNPは川崎病の合併症として極めて重要な冠動脈病変を生じた群や、ガンマグロブリン治療への応答性の芳しくなかった群でより強く相関を示し、これらのリスクを予測する因子として用いることが出来る可能性が示唆された。 このSNPが存在する遺伝子産物は末梢血単核球をイオノマイシン及びPMAにて刺激した際、数倍から十倍発現上昇することが確認され、炎症関連分子である可能性が強く示唆される。 RNA干渉の手法を用いたJurkat細胞上における同遺伝子のノックダウンにより、同細胞株内でのインターロイキン2の転写量が有意に増加し、逆に過剰発現により有意に低下することを明らかにした。 アレル特異的転写産物定量(ASTQ)の手法を用い、同遺伝子転写産物の量のアレル間での比較を同SNP部位がヘテロである健常人末梢血単核球を用いて行った。その結果川崎病と相関するアレル由来の転写産物の量的減少が認められた。 以上の結果からこの遺伝子産物はT細胞の活性化を負に制御していると考えられ、SNPによる発現の低下が川崎病における免疫活性化状態と深く関与していることが推察される。
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