研究概要 |
ヒト初期カポジ肉腫モデルを確立するため、非腫瘍性増殖をするfactor XIIIa陽性樹状細胞(FXIIIa DD)、すなわち間葉系のそれを分離・同定することがこの研究の主眼であった。まず手技的に比較的容易なマウス皮膚から細胞を分離をした。このものはin vitroでマウス血清のみで活発に増殖・継代でき、クローニングにより細胞株CMDC-1を樹立した。同系マウス線維芽細胞株BALB 3T3とのDNA microarrayの結果は、その遺伝子発現パターンからCMDC-1は線維芽細胞とは異なることが判明した。GM-CSFやIL-4のreceptorのmRNAの発現陽性だが、Factor XIIIaの有意なメッセージは認められなかった。またflow cytometryによる解析では、培地牛胎児血清以外の刺激因子なしにCD80を発現し、IFNγの刺激下でclass II陽性になり、一方CD45,CD68とCD86は陰性であり、免疫染色でCD11b, CD31,CD34,CD106,MECA32などが陰性であった。以上よりこれが間葉系由来であるが線維芽細胞や血管内皮細胞であることは否定的である一方、抗原提示能を持つ可能性が示唆された。このようなphenotypeを持つ細胞は従来報告されていない。これは、皮膚組織での間葉系由来の樹状細胞の存在と同時に、間葉系免疫担当細胞のin vivoでの未知の分化経路の存在をも示唆するものである。また、CMDC-1はfactor XIIIa分子を構成的には発現していないがGM-CSFやIL-4の作用に感受性を持つ可能性よりFXIIIa DDなどに分化する可能性もある。本研究においては、多義的で従来解釈が困難であったカポジ肉腫病変構成細胞のphenotypeを説明し、同時に真皮樹状細胞の発生起源と分化の様態についての新知見に発展する可能性をも持つデータを得ることができた。
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