研究課題
基盤研究(C)
癌抑制遺伝子であるPTEN(phosphatase and tensin homolog deleted on chromosome ten)と多くのヒト腫瘍や慢性炎症性疾患で恒常的に活性化されている転写因子であるStat3(signal transducer and activator of transcription 3)の表皮における生理学的な役割の解析、またその生化学的うらづけを解析することは、皮膚を構成する細胞の情報伝達をを考える上においてきわめて興味深いものであろう。これまでPTENの変異はPIP3の増加を介してAktの活性化を起こすと考えられてきたが、これに加えて活性型STAT3による細胞増殖能の亢進をPTENが負に制御していることを示唆する所見が報告された。では、Cowden病モデルマウスにおいて、Stat3はどのようにPTENと応答しながら細胞増殖に関与しているのか、これを解明することが本研究計画の主な課題である。そこで我々はKeratin5プロモータにCre蛋白を持ちPTEN遺伝子にloxP配列を導入したマウスと、STAT3遺伝子にloxP配列を導入したマウスを交配し、皮膚角化細胞特異的にPtenとSTAT3がいずれもホモ欠損になったダブルノックアウトマウスを作成した。このマウスの生物学的特性を観察し、STAT3あるいはPTEN欠損マウスのそれと比較検討した。その結果PTEN-Stat3ダブルノックアウトマウスの表現型はPTEN欠損マウスのそれと酷似しており、PTEN欠損による表現型はStat3が欠損することにより回復しないことを示唆する所見を得た。活性型Stat3は毛隆起に存在する幹細胞の増殖活性・アポトーシス抵抗性などを高めることにより、発癌に関与するとされており、その欠損はPTEN欠損による表現型を回復すると予想されていた。にもかかわらず、両者が欠損した場合には、PTEN欠損の表現型が保持されることが示唆されたことより、PTENは活性型STAT3の作用を負に制御しているが、Aktの活性化による細胞増殖能の亢進にはStat3は関与していないことが判明した。この結果はPTENの下流分子とStat3の下流分子の相互応答を考察する上で興味深い結果と言えよう。
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