研究概要 |
(1)ヒト末梢血好酸球のセレクリンリガンド機能 ヒト好酸球はPセレクチンと結合するが、Eセレクチンとの結合は観察されなかった。またアトピー性皮膚炎患者末梢血好酸球ではPセレクチンとの結合が強い傾向がみられた。 セレクチン機能を左右する糖鎖修飾酵素であるα(1,3)fucosyltransferase(FT)-IV,-VIIの発現を観察したところヒト好酸球はFT-IVmRNAがFT-VIImRNAに比して非常に優位であった。これらの事実はEセレクチンとも結合しFT-IV, FT-VIImRNA発現がともに明瞭である好中球と対照的であった。 (2)FT欠損マウスにおける好酸球皮膚浸潤と皮膚炎症反応 FT欠損マウスを用いて、好酸球皮膚浸潤の変化を観察した。FT-VII欠損状態でIgE依存性遅発反応における好酸球浸潤は著明に減少したものの完全ではなく、FT-IV欠損状態でも好酸球浸潤抑制は部分的であった。しかしFT-VII(-/-)/FT-IV(-/-)の状態では好酸球浸潤は完全に消失した。また皮膚反応の指標である耳介腫脹もFT単独欠損では部分的に、そして両者の欠損で完全に抑制された。 以上の(1)(2)が示す事実から、ヒト好酸球はFTとくにFT-IVの依存度が高く、そしておもにPセレクチンに結合して組織浸潤する可能性が考えられた。 (3)ヒト皮膚微小血管内皮細胞におけるPセレクチン発現 各種皮膚疾患のうち蕁麻疹やアトピー性皮膚炎病変部において血管内皮細胞細胞でのPセレクチン発現の増強が確認された。また皮膚微小血管内皮細胞はin vitroにおいてヒスタミン、IL-4,IL-13,サブスタンスPによりPセレクチンを発現した。またIL-4,IL-13,サブスタンスPによるPセレクチン誘導はいずれも転写因子STAT6によるものであることが確認され、STAT6"おとり"核酸によりPセレクチン発現抑制が可能であることが確認された。
|