研究概要 |
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)感染症においては感染細胞の増殖や分化の異常が原因HPV型に特異的であり、そのメカニズム解明がHPV研究分野の重要課題となっている。また、皮膚型と粘膜型に分類されるように、HPVの感染様式もまたHPV型特異的であることが解かっている。このことは、HPVの標的細胞の種類とその解剖学的分布がHPV型ごとに異なることを示している。 今年度の研究においては、前年度の研究期間中に発見した新しい細胞質内封入体について、病理組織学的検討、同封入体疣贅からのHPVDNAのクローニング(HPV95型と命名された)と全塩基配列の決定、担われるHPV遺伝子のORFの決定等を完了し論文発表した(Br J Dermatol,153:688-689,2005)。 HPV型特異的感染部位親和性に関しては、HPV63感染疣贅である点状疣贅を研究対象に、切除標本の全体から得られる連続切片を用いた病理組織学的、免疫組織学的および分子生物学的検討により、HPV63の初期感染病巣がエックリン汗管中心性に発達しているのみならず、疣贅周囲正常皮膚にもエクリン汗管周囲性に潜伏感染していることを明らかにした。HPV5が毛包(おそらく毛隆起部に存在する表皮幹細胞)を標的とするとする他研究グループの知見と併せて、HPVが普遍的に皮膚附属器(にある表皮幹細胞)を標的とすることやHPVが型特異的にこれら異なる附属器を感染標的としている仮説を提唱した(Br J Dermatol,152:993-996,2005)。 足底表皮様嚢腫の発症病理として長く外傷による表皮の真皮内迷入説が唱えられてきたが、今年度の研究によりHPV感染等によるエクリン汗管の類表皮化生の結果生じる嚢腫と言う新しい発症病理を提唱した(Br J Dermatol,152:993-996,2005)。
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