研究概要 |
進行期メラノーマに対するワクチン療法が注目を集めている。しかしその有効性を改善するためには免疫エスケープ現象の解明とその対応が重要である。エスケープ機序は(1)メラノーマ関連抗原(MART-1, gp100, tyrosinaseなど)の産生低下、(2)抗原をペプチドに分解してHLA Class Iに提示できない、(3)HLA Class Iが細胞傷害性T細胞にペプチドを提示できない、などに大別できる。本研究ではペプチド提示過程に存在する分子群(第1過程:TAP-1, TAP-2, LMP-2, LMP-7, LMP-10, Z, Delta, Tapacin, Calnexin, Calreticulin,、第2過程:HLA Class I-heavy chain, HLA Class 1-light chain (beta2-microglobulin))対するモノクローナル抗体を用いて、メラノーマ原発巣・転移巣における発現を検討した。 その結果、(1)MART-1, gp100, tyrosinaseの発現は原発巣では比較的保たれているが、転移巣では発現の低下が見られることがあった。特にメラニン色素産生がない症例では低下傾向が強いが、発現が消失することがない。(2)第1過程の分子ではDeltaとCalreticulinは常に発現がみられた。しかしTAP-1,TAP-2の発現は低下し、特に転移巣で著明であった。(3)第2過程の分子ではHLA Class I-heavy chain, beta2-microglobulinの発現低下が見られた。(4)抗原の発現を提示機構に関連した分子の発現の相関は認められなかった。(5)TAP-1,TAP-2の発現とHLA Class I-heavy chain, beta2-microglobulinの発現は相関した。(6)リンパ球浸潤とHLA Class I発現は逆相関した。 これらの結果は細胞傷害性T細胞にペプチドを提示する場合にメラノーマ細胞におけるHLA Class Iは必須であるが、その発現に最も影響している分子はTAP-1とTAP-2であることが示唆された。これらの分子異常が免疫エスケープに深く関与することが示唆された。
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