研究課題
基盤研究(C)
老人斑はアルツハイマー病(AD)脳に特異的であり、その主たる構成成分はアミロイドベータ(Aβ)である。従ってAβの産生及び分解機構を解明することはADの治療に直接結びつく可能性がある。我々はアミロイドベータ前駆体蛋白(βAPP)から、ガンマセクレターゼの基質であるCTF-βを切り出すβセクレターゼ(BACE)が驚くべきことにAβ自体を基質として認識し、切断することを見出した。我々はBACEのこの性質を利用してBACE活性やAβ産生を減じることができるのではないかと考えた。BACEが主として細胞内でAβをY10とE11部位の間およびL34とM35部位の間で分解することをcell-freeガンマセクレターゼassay及びリコンビナントBACEを用いたin vitro assayの両者の系で明らかにした。この結果より産生されたAβが、ベータAPPからCTF-ベータを切り出すBACEの活性を阻害し得るのではないかと考えた。そこで我々は消光性基質を用いたBACE assay系にAβペプチドを添加し、実際にBACEの活性を阻害するのかどうかを検討した。その結果BACE活性はAβペプチドにより部分的に阻害された。さらにAβのどの配列にBACE阻害活性があるのかを明らかにするため、短縮型Aβペプチドを各種作製し検討した。その結果Aβ29-40ペプチドが比較的強いBACE阻害活性を有することがわかった。このペプチドを基に新たな薬剤ターゲット開発が可能であると考えられた。さらにBACEは非常に凝集しやすい性質を持つ病原性物質であるAβ42も同様に切断した。切断されたAβはin vitroでははるかに凝集能が低かった。従ってBACEのAβ切断能を利用してAβの凝集や分解を促進する手法の開発が可能であることが示唆された。
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