研究概要 |
腰痛、神経痛、関節痛、癌性疼痛などの慢性疼痛は現代社会では10人に1人が罹患する頻度の高い疾患である。慢性疼痛は持続的で回避困難なストレスであるため、慢性疼痛で悩む患者の多くはうつ症状を呈する。このように人が慢性的に子トレスに暴露した場合、ストレス応答の中心である視床下部-下垂体-副腎(HPA)系の機能亢進が認められ、これがうつの発症に関連すると考えられている。しかし、慢性ストレスによるHPA系の機能亢進の機序や、HPA系の亢進とうつ症状などの精神症状の関連については不明の点が多い。そこで、本研究の目的は、HPA系の活動を調節している視床下部・海馬において、慢性疼痛により発現が変化する遺伝子を検索し、それらのHPA系に及ぼす作用を明らかにすることにより、慢性疼痛ストレスとHPA系の機能異常を結びつける新たな因子を同定することである。 座骨神経部分結紮ラットを作成後4週目にラットを断頭屠殺し、視床下部を採取RNAを抽出した。PCR-Selectを用いて座骨神経結紮群とSham手術群とで、mRNAの発現量を比較したところ、10数個のクローンで発現量に差が見られた。以下のmRNAについて、Northern解析とin situ hybridization法とで発現量を比較した。1)DNA J(Hsp40)homolog, subfamily B, number 2、2)potassium inwardly-rectifying channel, subfamily J, member 2(Kcnj 2)、3)PTH receptor 2、4)Grin 2a(glutamate receptor subunit epsilon 1 receptor、5)roundabout homolog 1(axon-guidance receptor activity)、6)Neureglin(Nrg 3)、 7)erb 4 tyrosine kinase receptor ligand、8)Interleukin 17。これらの遺伝子について、発現部位を詳細に解析して、慢性疼く痛ストレスにおける役割を現在検討中である。
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