研究概要 |
今回我々は、16名の強迫性障害患者と16名の健常者について脳梁の5つの部位におけるFractional Anistropy値(FA値)とMean Diffusivity値(MD値)を得た。患者と健常者間のFA値に有意差が認められた脳梁部位は、眼窩前頭葉から投射を受けるrostrum(患者のFA値、健常者のFA値、P値:0.55±0.07,0.69±0,06,P<0.001)のみであった。他の4部位のFA値は以下のとおりで、患者と健常者間のFA値に有意差を認めなかった。(部位:患者のFA値、健常者のFA値、P値、genu:0.80±0.07,0.81±0.09,P=0.70,rostral body:0.68±0.08,0.70±0.06,P=O.46,isthmus:0.69±0.08,0.73±0.07,P=0.06,splenium:0.87±0.10,0.86±0.08,P=0.74)。MD値については、全ての脳梁部位で患者と健常者間に有意差を認めなかった。また、患者のrostrumにおけるFA値と強迫症状の重症度の指標であるY-BOCS値は逆相関を示した(r=-0.72,p=0.002)。 我々は、強迫性障害患者における白質線維連絡に着目し、拡散テンソル画像解析を用いて、今日までに提唱された強迫性障害の神経回路網の異常を検出するべく研究を進め、神経回路網の障害の程度が、臨床症状の重症度と関連するという結果を得た。将来この研究も含めた神経科学的脳画像研究が、強迫性障害の病態解明の一端を担うにとどまらず、強迫症状に苦しむ多くの患者の診断や治療指針に貢献していくものと考えている。
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