研究概要 |
グルタチオン(GSH)を中心とする内因性抗酸化システムの機能低下に伴う酸化ストレスは神経障害過程で重要な役割を果たす。本研究ではプロトンMRスペクトルスコピー(H-MRS)を用いたGSHの定量的測定を行い、病態の解明を目的としている。初年度はその基礎データである、H-MRSを用いたGSH測定の精度ならびに経年的変化を検討した。 方法 1.5テスラMR装置(GE, Signa LX)を用い、short echo time H-MRS(PROBE-SV, PRESS, TR 3000, TE 30, NEX 116, ROI頭頂部白質、後頭部灰白質)を施行し、GSH等をLCModelにて定量的に解析した。 対象は正常成人コントロール7名、ならびに本研究に対しインフォームドコンセントが得られた発達ならびに神経学的所見が正常でありかつMRI上明らかな異常病変を認めなかった患児35名(2カ月-10歳)である。 結果 GSHの濃度は、正常成人では0.44±0.36mM(頭頂部白質)、乳児(2歳未満)で1.02±0.36mM(頭頂部白質)、1.10±0.26mM(後頭部灰白質)、小児(2-15歳)で0.87±0.57mM(頭頂部白質)、0.89±0.71mM(後頭部灰白質)であった。 考案 小児における検討から脳内のGSHは経年的に低下することが明らかとなった。白質、灰白質でのGSH濃度の違いは明らかでなかった。病的状態におけるGSH解析を進める基礎的データを獲得しえた。
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