研究課題
基盤研究(C)
休止期(Q)腫瘍細胞に対する血管標的薬剤の効果を、殺細胞効果を有する放射線照射や抗癌剤投与等との併用も加味して、すでに我々によって確立された、細胞の増殖死と密接に関連する微小核出現頻度と5-bromo-2'-deoxyuridine(BrdU)の連続投与によるQ腫瘍細胞の同定とを結合した、選択的にQ腫瘍細胞反応を検出する手法を用いる事によって評価し、固形腫瘍に対する総合的な分析を行なってきた。その結果、血管標的薬剤併用による中性子捕捉化合物、特にBorocaptate-^<10>B(BSH)からの硼素-10の腫瘍内分布、特にQ腫瘍細胞への分布の向上が認められ、中性子捕捉化合物使用後の熱中性子線照射による全腫瘍細胞とQ腫瘍細胞との感受性の拡大をある程度縮小できる可能性が示唆された。更には、低酸素細胞分画の大きなQ腫瘍細胞を効率よく殺す低酸素細胞毒の生体還元物質の効果は、血管標的薬剤との併用によって、さらに増強でき、この血管標的薬剤併用による増強効果が腫瘍細胞のp53 Statusにも依存しないことも明らかになった。他方、生体還元物質の投与を、従来の担腫瘍マウスへの腹腔内投与ではなく、浸透圧ポンプを用いた皮下持続投与で施行するとかなり効果的であり、特に急性低酸素領域の大きな細胞集団の制御にこの手法が効果的である事が明らかになった。以上より、腫瘍内の低酸素細胞集団に対しては、一般的にTirapazamineなどの生体還元物質の投与が効果的であり、その中でも腫瘍血管から遠い為にほぼ決まった部位にほぼ恒常的に存在するとされる慢性低酸素領域の大きな腫瘍に対しては、以前の我々の研究成果より低温度温熱処置との併用が有効であった。他方、腫瘍血管のスパスムスが原因となって腫瘍内のさまざまな部位に一時的に生ずるとされる急性低酸素領域の大きな腫瘍に対しては、生体還元物質の持続的皮下投与が効果的である事が今回新たに明らかとなった。以上の生体還元物質の特性を生かし、従来の中性子捕捉化合物では硼素-10を分布させることが非常に困難である腫瘍内低酸素領域にある程度指向性を有した新規の化合物(生体還元物質硼素-10キャリアー)の開発に関しても、現在候補化合物が絞られつつある(TX-2100など)状況である。
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