研究概要 |
原発性胃癌54例について、その各腫瘍壁深達度、stageと予後を検討した。ついで、それら予後を規定すると予想される因子を免疫学的に検討した。腫瘍側因子として、HLA-class 1抗原、Beta-2-microglobulin,癌抗原peptideとしてMAGE-1,Lck,HLA-class 2を用いた。T cell側の因子としてCD3,CD4,CD8を使用した。 1)腫瘍側因子 HLA-class 1の発現率は、84.3%(43/51,判定不能3例を除く)であり、Beta-2-microglobulinの発現率は60.4%(29/48、判定不能6例を除く)であった。また、HLA-class 1とBeta-2-microglobulinの染色発現率は必ずしも比例せず、両者とも(-)であったのは4例であった。 腫瘍細胞におけるHLA-class 2の発現率は、38.0%(19/50、4例は判定不能)であった。癌抗原peptideでは、MAGE-1は11.3%(6/53)が陽性であったが、Lckでは、腫瘍細胞陽性はstage IVの1例のみ3.7%(1/54)であった。 2)T cell側因子 CD3では全例によく染色された。CD4では、96.2%(51/53,1例判定不能)とよく染色された。 CD8では、49.1%(26/53,1例判定不能)が陽性で、stage IVでは58.6%(17/29)であった。 (結論) 胃癌症例の免疫組織染色において、HLA-class 1分子の陽性率は84.3%、Beta-2-microglobulin分子の陽性率は60.4%であり、両者とも陰性は8.3%(4例,4/48,6例は判定不能)で少なくともこれらの症例では、peptideを用いた抗原特異的免疫療法は無効であると考えられた。予後とこれら免疫学的因子については、症例数を増加して検討する必要がある。
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