研究概要 |
ゲノムレベルから蛋白レベルまでのアレイ技術を集約したシステムの構築により、主に食道扁平上皮癌をモデルに「ゲノム一次構造異常の詳細な探索」を起点にとした「癌の個性診断」に必要十分な癌関連遺伝子を網羅的・体系的かつ迅速に同定することを目的に研究を進め、以下の成果を得た。 1.アレイCGH法による食道扁平上皮癌のゲノムコピー数異常領域の検出とその標的遺伝子候補の同定 食道扁平上皮癌細胞株ならびにマイクロダイセクションにより特異的に癌細胞だけを採取した臨床検体を対象に、自作BACアレイを用いてアレイCGH解析を行なうことで検出した微細な増幅やホモ欠失領域内からの標的遺伝子候補の解析を進めた(Sonoda et al.,Cancer Res,2004)。また、コピー数異常領域/遺伝子と特定の臨床病理学的因子との統計学的な比較検討により、特定の形質(リンパ節転移や予後など)の予測に有用なパラメーターの解析を進めた。 さらに、同じアプローチを用いて消化器癌をはじめとする他の癌でも増幅・ホモ欠失の標的遺伝子候補を探索し、定量的リアルタイムPCRや組織アレイの結果から診断や予後推定に役立つものをはじめ多くの癌関連遺伝子を同定できた(Takada et al.,Cancer Sci,2005;Tanami et al.,Lab Invest,2005;Takada et al.,Oncogene,2005;Izumi et al.,Hum Mol Genet,2005;Imoto et al.,Cancer Res,2006;Takada et al.,Oncogene, in press)。 2.ゲノムアレイを用いたBAMCA法によるエピゲノム異常解析による新規メチル化遺伝子の同定 メチル化DNA断片を濃縮できるMCA法をアレイCGH法と組み合わせることにより、異常メチル化領域を同定する方法を開発し(BAMCA法;Misawa, Inoue et al.,Cancer Res,2005)、食道癌でDNAメチル化により発現抑制されている新規遺伝子を複数同定できた。そのうちひとつの遺伝子は、強制発現により食道癌細胞株に対する細胞増殖抑制作用を確認し、臨床例においても比較的高頻度に発現消失していたことから、食道癌抑制遺伝子候補と考えられ(未発表データ)、本アプローチが新規癌関連遺伝子のスクリーニングとして有用であることが示された。
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