研究概要 |
消化管上皮に抗アポトーシス蛋白のひとつであるBcl-2を過剰発現するBcl-2 transgenic(Tg)マウスとIL-10^<-/->マウスを交配させることによりIL-10^<-/-> Bcl-2 Tgマウスを作成した. IL-10^<-/->マウスと比較し,IL-10^<-/-> Bcl-2 Tgマウスは20週齢までほぼ正常な体重増加を示した.24週齢ではIL-10^<-/-> Bcl-2 Tgマウスの体重はwild-typeマウスに比し低値となるが,IL-10^<-/->マウスよりは高値であった.IL-10^<-/->マウスでは5週齢以降,脱肛が出現するのに対し,IL-10^<-/-> Bcl-2 Tgマウスでは12週齢まで脱肛は認められなかった.組織学的にIL-10^<-/-> Bcl-2 Tgマウスの大腸は,IL-10^<-/->マウスに比し,上皮障害,炎症細胞浸潤が軽度であった.IL-10^<-/->マウスの腸管上皮ではアポトーシスが増加していたが,Bcl-2遺伝子導入により減少した.IL-10^<-/->マウスでは腸管上皮の透過性亢進を認めたが,IL-10^<-/-> Bcl-2 Tgマウスでは認められなかった.IL-10^<-/-> Bcl-2 Tgマウス,IL-10^<-/->マウスともに大腸粘膜固有層(CLP)リンパ球のサイトカインプロファイルはTh1優位であった.IL-10^<-/-> Bcl-2 TgマウスではIL-10^<-/->マウスに比しCLP浸潤リンパ球数は有意に少なかった. IL-10^<-/->マウスでは多数の腸管上皮がアポトーシスを来たしており,多数のTh1優位なリンパ球が存在し,腸炎が重症化する.しかしBcl-2遺伝子導入により腸管上皮のアポトーシスが減少すれば,病態の初期段階は同様でも,完全な腸炎発症を抑制しうることを明らかにした.
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