研究概要 |
1,各正常臓器でのDGKδ発現量の検討 正常組織でのDGKδの発現量を比較検討するため、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、胎盤、骨格筋、大腸、卵巣、白血球、前立腺、小腸、脾臓、精巣、胸線から抽出したmRNAを鋳型作成されたcDNAを使用して、RT-PCRを行った(ヒト正常組織cDNA : human multiple tissue cDNA 1(MTC Panel 1,Clontech, CA, USA)。発現分布は各臓器によって異なっており、DGKδ多様性の重要さを裏付ける結果となった。DGKδmRNAは、膵、白血球、卵巣に強く発現していた。さらに、小腸、脾臓にも発現を認めた。脾臓、心、腎にも少量の発現を認めたものの、肝、肺組織には発現していなかった 2,肝細胞癌株および切除検体におけるDGKδ発現量の検討 まず、ATCCより供与されたHepG2、Hep3B、PLC/PRF/5、C3Aの4種の肝癌細胞株を用いDGKδの発現を検討したところPLC/PRF/5以外の3株では高く発現していた。次に、手術にて摘出された肝細胞癌19症例においてその非癌と癌組織における各DGKアイソザイムの発現を半定量的RT-PCRにて検討した。その結果、DGKαは5症例(26.3%)、DGKδは12症例(63.2%)、DGKεは6症例(31.6%)、DGKθは7症例(36.8%)、DGKιは5症例(26.3%)において非癌部組織に比較して癌組織で高く発現していた。これらの症例においてその臨床的または病理学的因子とDGK発現との相関を統計学的に検討したが、唯一相関があったのはDGKδの発現と臨床病期の進行度分類であるTNM分類のみであった。
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