研究概要 |
胃癌腹膜播に対する分子標的治療の可能性、有用性につき検討を行うため、平成16年度は未分化型培養細胞株MKN-45とMKN-45を親株として樹立した高頻度腹膜播種株MKN-45Pの比較検討をin vitroおよびin vivoにおいて行った。また、また、Stage II漿膜浸潤胃癌におけるVEGF,MMP-2の発現と腹膜再発との関連を免疫組織化学的に検討した。その結果、MKN-45Pを用いた腹膜播種モデルは有用であり、VEGF,MMP-2は腹膜播種治療に対する有効な分子標的治療のターゲットになりうると考えられた。平成17年度は腹膜播種モデルを用いて、MMP阻害剤(OPB3206)、VEGF阻害剤(Avastin)を投与し、Avastin投与群でコントロール群に比べ、腹水量が有意に抑制され、OPB3206,Avastin投与群両者ともコントロール群に比べ水腎症、核分裂指数が抑制され有意な生存率の延長を認めた。以上よりMMP阻害剤、VEGF阻害剤は胃癌腹膜播種治療薬として有用と考えられた。平成18年度はin vitroの検討により腹膜播種成立にはIL-6,IL-8,VEGF,MMP-2の発現およびtibronectinへの接着性が重要と考えられた。また、Western blottingにてMKN-45PにVEGFCの発現は認めなかったが、腹膜播種モデルのマウス腹水中にVEGF-Cの発現をWestern blottingにて認め中皮細胞由来のVEGFCまたは癌細胞由来のサイトカインの刺激や中皮細胞由来のサイトカインの関与などが示唆された。平成19年度は組織上のVEGF,VEGF-C,MMP2の発現を免疫組織学的に検討したところ、MMP阻害剤、VEGF阻害剤投与群とコントロール群間にそれらの発現にあきらかな差は認めず、MMP阻害剤およびVEGF阻害剤は癌細胞のVEGF,VEGF-C,MMP2の発現には直接影響しないと考えられた。以上の結果より、癌細胞または癌細胞から中皮細胞を介し分泌された様々なサイトカィンおよび接着因子がサイトカインネットワークをつくり腹膜播種成立に関与していると考えられる。このうちVEGF,MMPsを標的とした薬剤を腹膜播種モデルを使用し、腹膜播種の-形態である水腎症を改善し、増殖活性を抑制することにより有意に生存率を向上させた。とくにAvastinは腹水量を有意に抑制することにより胃癌腹膜播種に対し、有効と考えられた。
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