研究概要 |
手術に伴う侵襲反応をサイトカインの遺伝多型の見地から解析することが本研究の目的であり,すなわち,個々の症例において,まずどの程度の炎症性サイトカインの分泌が行われているかということと明らかに術前,あるいは術後の侵襲によって異なるサイトカインの分泌がある症例があるか否かを確認するべく,本実験に入る以前に平成16年度にはまず,基礎データの収集目的に約30例の大腸癌患者の血中サイトカイン値(TNFaならびにIL-10)をELISAにて測定した.この30例のサイトカイン値の動きとしては,術前値はほぼ全例,測定感度に達しておらず,術後のTNFaの値については,ばらつきが大きくでるものの,文献的に遺伝多型の症例に認められるような異常高値を示すものはなく,予想されたとおりより多くの症例を積み重ねる必要を感じた.IL-10についてもほぼ同様の結果であった.すなわち,TNFaならびにIL-10の遺伝子多型症例そのものが全体の中で非常に少ない場合,当初予定していたサイトカイン値ならびに侵襲ホルモンを測定しても,基本的に多型がない症例との比較が非常に困難と考えられる.したがって,多くの症例の検討を行う場合,まず,いくつかの点に限って測定を行い,その上で,遺伝子多型との関連性などを検討する必要があることが示唆された.未だに明らかな遺伝子多型の症例は,認めていないが,今後,サイトカインの動きに着目し,症例を重ねて,本研究課題の目的である術後侵襲反応とサイトカイン遺伝子多型解析による危険因子予測へとつなげていきたい所存である.
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