研究概要 |
血管新生抑制活性を示す新規分子Vasohibinの非小細胞肺癌症例における臨床病理学的検討を44例の肺癌手術例に対して施行した.血漿中濃度をWesternblotting法により半定量的に測定し,摘出した肺癌組織の免疫染色(Vasohibin, VEGF, HIF1α)との関係について検討した. Vasohibinは免疫組織学的にCD31陽性細胞に染まり,リンパ管マーカーのPodoplanin陽性細胞に染色されないことからVasohibinは血管内皮細胞に発現していると考えられた.腫瘍中心部と辺縁部のCD31陽性部位の陽性率とVEGF及びHIF1α検出との関連性を検討したところ,VEGF陰性例では陽性率が平均0.44に対し,陽性率では平均0.61と2群間に有意差を認めた.HIF1αについても同様に陰性症例では陽性率は平均0.37に対し,陽性例では平均0.58と2群間に有意差を認めた.組織におけるVEGFとHIF1αの発現の関係をみるとVEGFとHIF1αは44例中30例で一致していた.次に免疫組織内における1mm^2中の平均血管数と陽性率の関係について検討したが,Vasohibinは血管新生のバイオマーカーとして正の相関だけではなく,血管新生のnegative feedback作用があるため1mm^2中の血管数と陽性率には相関は認められなかった. 血漿中Vasohibin蛋白の測定で37/44(84%)でVasohibinが検出された.また検出の有無と免疫組織における陽性率との検討では,血漿中検出例では切除肺癌組織中の陽性率0.56に対して,非検出例では0.36と両者に有意差が認められた.以上より,血漿中Vasohibinh量は肺癌組織の発現を反映していることが示唆された. これらの結果から,Vasohibinは非小細胞肺癌の診断マーカーとしての臨床応用が期待される.
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