研究概要 |
本研究ではDNAメチル化プロファイリングを肺癌の予後判定、個別化治療へ応用することを目的に、過去に癌の診断・治療が行われた症例の臨床データをretrospectiveに解析し、同時に各症例の癌組織より抽出したDNAのメチル化パターンを解析した。 臨床的な組織保存法として一般的な、ホルマリン固定パラフィン包埋ブロックからDNAを抽出し、DNAメチル化を解析する手法を確立した後、肺癌350例の腫瘍組織および近接正常組織よりDNAを抽出した。抽出したDNAをbisulfite処理し、real-time methylation specific PCR法(MethyLight法)によりp16, hMLH1, APC, MGMT, DAPK, MYOD1, TIMP3のプロモーター領域におけるDNAメチル化を定量した。腫瘍組織(T)と正常組織(N)におけるそれぞれの遺伝子のhypermethylation(HM)頻度は、p16(T),14.1%;p16(N),1.8%;hMLH1(T),0.7%;hMLH1(N),0%;APC(T),24.8%;APC(N),8.8%;MGMT(T),67.2%;MGMT(N),87.5;DAPK(T),1.6%;DAPK(N),3.6%;MYOD1(T),42.2%;MYOD1(N),34.4%;TIMP3(T),3.1%;TIMP3(N),3.6%であった。腫瘍組織でのメチル化と臨床病理学的因子の関連を検討すると、p16のメチル化は有意に男性および扁平上皮癌に多く、一方APCのメチル化は腺癌で有意に多かった。240例を対象に予後との関連を検討すると、p16, MYOD1のメチル化は予後不良因子であった。以上の結果から、各遺伝子のDNAメチル化プロファイルを総合的に判定し、肺癌の個性診断および個別化治療に応用可能であることが示された。
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