研究概要 |
まずはじめにマウスインターロイキン15(IL-15)とIL-2の全長のcDNAをクローニングし,その後大腸菌系無細胞蛋白発現用にpIVEXベクター(ロシュ社)に組み換え,蛋白の発現を検討した。無細胞蛋白発現装置(ロシュ社)により24時間蛋白を産生させると,蛋白は発現したが,沈殿が起こり,変性条件の精製のみ可能であった。一方酵母用の無細胞蛋白発現ベクターにサイトカインcDNAを組み換えるとIL-15,IL-2両サイトカインの溶解度が高まり,天然型のサイトカインが可溶性で精製可能となった。精製されたサイトカインは脾細胞の増殖を促し,機能蛋白の精製に成功したが,一回に精製できるサイトカインは各約100ngで,生体に投与できるほど安価ではなかった。そこで,マウス膠細胞腫瘍GL261,大腸癌細胞株MCA38に空ベクター,IL-2,可溶型TNF受容体II型(sTNFRII)を組み合わせて遺伝子導入し,脳内及び皮下に接種し解析した。GL261ではIL-2単独導入群の生存が最も延長し,MCA38ではIL-2/TNFRII共導入群の生存が最も延長した。各群の腫瘍内浸潤T-細胞の表現形には差異はないが,共導入群のマクロファージは他群と異なり試験管内90%以上死滅した。また,CD8やCD4T細胞を除去すると共導入群で他群と比べ最も抗腫瘍効果が抑制された。以上より,IL-2単独の治療よりTNFをsTNFRIIで阻害させる方が細胞性免疫を誘導しやすく,それは,腫瘍内浸潤マクロファージの性質を変化させるからであると考えられた。また,腫瘍の組織型により細胞性免疫とinnate immunityのどちらが抗腫瘍効果の主役を果たしているかが異なることも示唆された。本研究の成果を元に今後は,腫瘍内でのマクロファージ/樹状細胞の分化成熟の決定にサイトカイン治療がどのように働くのか解明する予定である。
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