研究概要 |
1)グリオーマ細胞でのエトポシド耐性株の樹立 T98G,U251細胞株をエトポシド80μg/mlの濃度の細胞培地にて約1ヶ月培養すると、数個のコロニーを形成した。これらのコロニーの細胞を回収して、その後、エトポシドを含まない培地で培養を継続させ、エトポシド耐性株として作製した。Parent細胞とエトポシド耐性細胞を用いて、再度エトポシド80μg/mlの濃度で細胞を培養すると、parent細胞では殆どの細胞が細胞死を起こしたが、エトポシド耐性細胞では殆ど細胞死を起こさず、エトポシド耐性株であることが確認された。 2)Parent細胞とエトポシド耐性細胞を用いて、エトポシドに暴露させた時のSmac,IAP,Bcl-2,Bcl-XLなどのアポトーシス関連たんぱく質の発現について、ウエスタンブロットにて解析すると、エトポシド耐性株では抗アポトーシス蛋白、IAP,Bcl-2,Bcl-XLの発現増加を認め、アポトーシス誘導蛋白Smacでは発現の低下を認めた。このことから、エトポシド耐性株ではエトポシドによるアポトーシス誘導が抑制されていることが確認された。 2)ラパマイシンとACNUの併用によるU251グリオーマ細胞のアポトーシス増強効果について また、我々は、グリオブラストーマではしばしば活性化されているmTOR(mammalian Target of Rapamycin)の抑制剤であるラパマイシンをACNUと併用した時の抗腫瘍効果について研究した。この研究でグリオーマ培養細胞U251MG細胞に対し、ラパマイシンはCDK(cyclin dependent kinase) inhibitor p21の発現を抑制することでACNUの抗腫瘍効果を増強させることを見出した。 3)Trans-4-lodo,4'-boranyl-chalcone(TLBC)の抗グリオーマ作用について 我々は上記研究とは別に、フラボノイド類似化合物であるカルコンの誘導体Trans-4-lodo,4'-boranyl-chalcone(TLBC)のグリオーマ細胞に対する抗腫瘍効果について検討した。TLBCは様々なグリオーマ細胞株(A172,U87MG,SF126,T98G,U251,YH13,9L,C6)に対し、非常に低濃度でカスペース依存性アポトーシスを誘導し、そのメカニズムとしてBcl-2やBcl-XL、Baxなどのアポトーシス関連分子を変化させることを確認した。更に、グリオーマ培養細胞を移植したマウスでのin vivo実験で、TLBCは腫瘍の増大を抑制し、強い抗腫瘍効果があることが判明した。カルコン誘導体は臨床的に用いるまでにはまだ十分な研究が必要であるが、グリオーマ細胞に対し強い抗腫瘍効果を認めたことから、抗癌剤として期待できるものと考えられた。
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