研究概要 |
1.神経膠芽腫の増殖、生存、放射線抵抗性などの生物学的特性へのAkt/PKBの関与をさらに明らかにしようと試みた。 Akt/PKBにはAkt1,Akt2,Akt3のisoformが存在する。ヒト悪性神経膠腫細胞であるU251MG,U87MG,GB1細胞におけるAkt isofromのタンパク発現パターンについて、ウェスタンブロティングを行い評価した。その結果、Akt1,Akt2の発現が高いことが判明した。このAkt1,Akt2に対するshort interference RNA(siAkt1,siAkt2)をU251MG,U87MG,GB1細胞に導入した。ウェスタンブロッティングにてAkt1,Akt2の特異的ノックダウンを確認した。細胞増殖について、細胞数をカウントして検討した。コントロールsiRNAを導入した細胞と比較し、siAkt1あるいはsiAkt2を単独で導入した細胞では、放射線照射後の細胞増殖がわずかに抑制された。siAkt1とsiAkt2をcointroductionし放射線照射を行うと著明に細胞増殖が抑制された。フローサイトメトリーを行い細胞周期のプロファイルを調べると、siAkt1,siAkt2を導入し放射線照射を行った細胞ではコントロールsiRNA導入後放射線照射を行った細胞と比較しsub G1 populationの増加を認めた。同時にタネルアッセイを行い、タネル陽性細胞の増加を認め、神経膠腫細胞においてAkt/PKBが抗アポトーシスに働いていることが示唆された。siAkt1,siAkt2導入細胞ではリン酸化Akt、リン酸化Badのタンパク発現レベルの低下がウェスタンブロッティングにて認められた。以上よりAkt1,Akt2ノックダウンによりAktを介した生存シグナルが抑制され悪性神経膠腫細胞の放射線感受性が増すことが示唆された。このシグナル伝達経路のどの下流分子が神経膠芽腫の生存に最も関与するか同定することが今後の課題である。 2.神経膠腫におけるPML(promyelocytic leukemia)遺伝子、PMLタンパク質の発現を検討した。 神経膠腫組織からmRNAを抽出し逆転写PCR、免疫組織染色を行い評価した。その結果、神経膠芽腫ではPML遺伝子、PMLタンパク質の発現量がlow grade astrocytoma、正常脳組織と比較し優位に低下していた。PML発現低下と腫瘍悪性度との相関がみられた。今後、PMLの発現量低下の機構とPMLの悪性神経膠腫における役割の解明が必要である。 上記の結果は現在、投稿準備中である。
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