研究概要 |
下垂体前葉ホルモンの分泌調節には下垂体門脈系を通じた分泌刺激ホルモンによる制御が主体であると考えられてきた。我々は、各種の組織学的手段を用いた研究結果から下垂体内分泌系への各種の作用発現がギャップジャンクションで機能的合胞体を形成した濾胞星細胞を介して行われている可能性に注目してきた(Mabuchi & Sakuma et al.,2004;Shirasawa & Sakuma et al.,2004;Kurita & Sakuma et al.,2004)。一方下垂体ホルモン分泌調節へのレプチンの作用機構については、レプチン受容体がGH細胞上にしか認められていない事など、未だ不明な点が多い。しかし最近下垂体濾胞星細胞にはレプチン受容体が存在することが明らかになった。我々の研究でも去勢した雄ラットにhuman recombinantレプチン又はrecombinant rat CNTFを腹腔内投与すると濾胞星細胞間のギャップジャンクションの形成が促進される事が分かっている。我々はレプチン受容体遺伝子異常症を呈する遺伝性肥満ラットZucker (fa/fa)に見出されるレプチンの機能不全を原因とすると思われる濾胞星細胞間のギャップジャンクションの形成不全と各種下垂体ホルモンの分泌異常を治療する方法について、血中のホルモンレベルの生化学的測定と細胞種等に注目した透過電顕を用いて検討してきた。最近になり濾胞星細胞の下垂体前葉内での分布密度が、下垂体門脈の下垂体前葉の流入部に特異的に高くまたそこにLH-RHホルモンのレセプターが存在している事(Sato G & Sakuma et al.,2005)、またそこから発生しているギャップジャンクションで結合した濾胞星細胞間に電気的な同期を生じている事を電気生理学的に証明した(Sato Y & Sakuma et al.,2005)。そこから、下垂体門脈の下垂体前葉の流入部で得られた分泌刺激ホルモンによる刺激がホルモンの分泌調節に役立っておりこれがレプチンの機能不全により破綻した場合に各種下垂体ホルモンの分泌異常を生じている事が強く示唆された。
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