研究概要 |
1.目的 壊死後膝蓋腱に浸潤する外来性細胞のマトリクス再構築過程を検討するため,rat in situ凍結解凍処理を用い壊死後膝蓋腱におけるIII型collagenの発現を検討し、さらに同膝蓋腱におけるcytokine発現およびcytokineの外来性浸潤細胞におけるMMPおよびcollagen発現に対する効果を検討した 2.方法 Wistar系rat膝蓋腱に凍結解凍処理を行ない、III型collagenの発現を定量的RT-PCRおよび免疫染色にて検討し、浸潤細胞におけるcytokine発現を免疫染色にて検討した.さらに凍結解凍処理後6週の膝蓋腱より単離した浸潤線維芽細胞にIL-1beta、PDGF-B,TGF-betaを投与し、MMPおよびcollagenのmRNA発現をNorthern blotにて検討した. 3.結果 術後6,12週の凍結処理腱のIII型collagen mRNAの発現量はそれぞれ内部対照の4.9±3.7%および4.5±2.6%と,sham手術に比し有意に高値を示した.また、免疫染色では浸潤細胞周囲にIII型collagenの発現を認めた.凍結解凍処理後膝蓋腱の浸潤線維芽細胞にIL-1betaの発現亢進が認めたものの、PDGF-B,TGF-betaの発現亢進は認められなかった.IL-1beta投与による浸潤線維芽細胞のMMP-13mRNA発現の亢進作用は正常線維芽細胞より弱かった. 4.結論 靭帯再建術において移植腱のcollagen fibril径は術後早期に減少する機序はいまだ不明であった.本研究で認められた浸潤線維芽細胞のIII型collagenの発現増加は,移植腱に認められるfibril径減少の一因であること、さらにIL-1betaによるMMP産生亢進が移植腱劣化に深くかかわっている可能性が示唆された.
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