研究概要 |
変形性股関節症の発症には,機械的ストレスが重要な役割を果たす.しかしながら,軟骨細胞または軟骨組織に加わる機械的ストレスがどのような機構で軟骨変性を惹起するかについては不明であった.本研究では機械的ストレスとガスメディエーター,とりわけ活性酸素との関係を明らかにすることを第1の目的とする.また高分子ヒアルロン酸の関節内注入療法が変形性関節症に有効であるが,その作用機序についてはこれまで不明であった.本研究では,機械的ストレスによって軟骨細胞より誘導される活性酸素がヒアルロン酸の分子サイズに及ぼす影響を検討することを第2の目的とした. 平成16年度には,軟骨細胞に周期的牽引負荷を加えることにより,ガスメディエーターである活性酸素が誘導されることを証明した.これは培養細胞を用いた結果であるが,平成17年度にはこの結果を軟骨片で再確認した.すなわち,軟骨片に圧迫負荷を加えることにより,活性酸素の反応産物であるパーオキシナイトライトの誘導が組織学的に明らかにされた.また,ヒアルロン酸に活性酸素を反応させることにより,その低分子化が観察された.平成18年度は周期的牽引負荷を加え,培養液中に放出されたヒアルロン酸の分子サイズを検討するとともに,活性酸素の関与の有無を検討した.この結果,機械的ストレスにより活性酸素の誘導は明らかに増加し,ヒアルロン酸の分子サイズは低下した.一方ヒアルロン酸合成酵素はmRNAレベルでの転写活性亢進を認めた.また活性酸素の中和剤であるsuperoxide dismutase(SOD)を添加し,分子サイズの変化を検討したところ,機械的ストレスによるヒアルロン酸の低分子化が回復された. 以上の結果より,機械的ストレスによって誘導される活性酸素がヒアルロン酸の低分子化を引き起こすことが証明された.
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